ここ数年の栃木SCを語るとき、『夏場の失速』というのがよく語られます。

そして、なぜかみなさん、体力が原因としています。

夏の暑い時期になって、最後まで走れなくなるから負けるんだと。

だから、体力つける為に走れと。


勿論、体力をつけることは重要だと思います。サッカーは走るスポーツですから、昨シーズンの湘南のように全員が動いて最後まで走る続けることができるサッカーというのは非常に魅力だと思います。

だけど、栃木SCが夏場に失速するのは体力の問題だけじゃないような気がするんですよね。


先日、過去に録画した栃木SCの試合をいくつか見てまして、特に昨年や一昨年の夏場に負けが込んでた試合をいくつか観ていて感じたんですが、相手チームと比較して、栃木SCの方が体力的に劣っているという感じには見えませんでした。

確かに後半足が止まるシーンも見られましたが、それは相手チームも同様ですし、むしろ栃木の方が最後までよく走ってる選手が多かったように思います。


栃木SCというのはJリーグにあがって松田監督が指揮を執るようになった。松田監督というのはゾーンで有名で、選手にはいくつか約束事を決める。ボールを中心として、どういう距離感でとか非常にきっちりしていました。先日冗談で話してたんですが、まるで北朝鮮のマスゲームのように統率がとれたサッカーでした。

そういう統率のとれたチームというのは、逆に言えば崩れた時が弱い。

特にサイドチェンジを多用され、揺さぶられると統率が崩れることが多く、所謂イレギュラーな状態になってしまう。その隙に攻められての失点が多かった。相手チームの監督もそういう栃木SCの弱点を理解してそこを突かれることが多々ありました。


ですから、シーズンはじめは相手チームもチーム作りの最中ですし、栃木SCの新加入選手や新シーズンの戦い方もまだ知られてないのか、なかなか崩されることはなかったんですが、チームが熟成した夏場には相手のスカウティングも栃木SCの弱点を理解し、そして崩される。

ですから、一昨年の終盤、松本育夫監督にかわって、戦い方を変えた瞬間に急に勝てるようになった。基本の戦術はあるけれど、育夫さんは特に難しいことをしているわけじゃなかったですよね。松田監督のような細かい選手の約束事を減らし、その分、イレギュラーな状態になっても個の力で打開できるようにしてました。

特にクリスティアーノやサビアがのびのびプレーしていたのが印象的です。

そうなると、相手チームも栃木SCの戦い方を読めなくなりますので、勝てることが多かった。


昨シーズンの場合でも同様に、新しい監督になり、最初は相手チームも栃木SCの戦い方がわからず、弱点もなかなか見えなかった。

ところが夏場になり、スカウティングされて崩されるようになった。

昨シーズンの後半よくなったのは本間選手の加入と、他の選手の覚醒があったからでしょうね。

特に中盤の底のボランチにレベルの高い選手が加わることで、戦い方もガラッと変わりました。繋ぐのかためるのか。その辺の駆け引きなんかも読めなくなります。


それから、栃木SCはムードで左右されるようなところがあります。試合中でも失点すると非常にムードが悪くなる。同様にシーズン負けが続くと悪いムードで試合してるようなところはありました。

ですが、勝ちが続くとイケイケムードになるようなところがありますので、その辺も影響してるんじゃないかなと思います。

そういうムードっていうのは、突き詰めると、やはり指揮官の能力なんでしょうね。ベンチも含めた選手の采配。

例えばベンチの話ですと、通常Jリーグの交代枠は3人ですから、交代枠きっちり使ってもベンチは2人余るわけです。その余る選手をどういう采配するのか。そういう部分もチームのムードを作る要素になります。

試合前やハーフタイムにどういう指揮をするか。普段の練習時でもどういう指導をしているか。選手の士気を上げるのも指揮官の役目です。



夏場、スカウティングされてウィークポイントを突かれるんであれば、逆にこちらが相手を研究し、相手のウィークポイントを突くようにする。或いは、相手の攻め方を読んでそれを逆手に取ったプレーをする。そういう技術が指揮官、選手に求められると思います。


暑くなると体力がなくなる・・・そんな単純な話じゃないんじゃないかなと。いくつか過去の試合を観ていて感じました。

スカウティングや選手間のムード作りも含めた指揮官に求められる力量、選手自身に求められる技術、戦術理解。そういうものが重要なんじゃないかなと思います。