栃木SCがJリーグにあがる前、今よりももっともっと過酷な環境で練習をしていました。

アマチュア選手がいた頃は、昼間働き、夜、夜間照明の土のグランドで練習をし、その後、再び職場に戻り、毎日深夜まで仕事を続けたという選手もいました。
プロ化が進んだ後も決していい環境とは言えません。他のJクラブからの移籍を考えていたある選手は、あまりの粗悪な環境に契約をしなかったという話もあります。

固い地面の上に敷き詰められた人工芝での練習。

真っ黒になったサッカーボール。

氷は近くのホテルからもらい、洗濯は近くのクリーニング屋が洗濯し・・・みんなが支えあってサッカーを続けていました。

J1の環境の整ったチームであれば、全てクラブ側が行うことも、選手が行わなければいけないことが沢山ありました。

母体企業を持たないクラブチームはお金もなく、こうするしかなかったのです。

大好きなサッカーを続けたいが為に、いい大人たちがそういう思いをして支えあっていたのです。


だからこそ1勝の重みというのは大きかった。

みんなの苦労が報われる瞬間だったのかもしれません。


その頃は、たかだかリーグのとある試合でも、敗戦すると人目をはばからずに悔しがり、時には涙したり、ピッチに倒れこみうずくまる選手もいました。

あんなに苦労したのに、どうして勝てないんだろう。

そんな思いだったんじゃないかなと思います。

支えてくれるサポや周りの人々の為、自分や家族の為。今日勝たなくては明日はない。

そんな危機感にあふれていました。

栃木SCだけではないですね。今現在も、JFLや地方リーグなどで試合をしている母体企業を持たないクラブチームの殆どが同じような環境で頑張っています。J1昇格が決まった松本山雅もかつてそういうチームのひとつでした。


だから、JFL時代の栃木SCには、そんな選手の姿に感動して応援する人たちも多かったように思います。Jリーグの今よりももっとお客さんが多かったように思います。


あの頃と監督も選手も変わり、まだまだとはいえ、環境も恵まれてきました。

なにより、天然芝のグランドで練習できるというのは大きいと思います。クラブハウスの建設も進めているそうですし、あの頃と比較したら非常によくなってきています。

環境もよくなり、あの頃よりずっとサッカーのうまい選手たちが集まっているにも関わらず、勝てない。

お客さんは増えない。

感動できない。


何故なら、かつて栃木SCにあった『思い』がそこにないからじゃないでしょうか。


あの頃大変な思いをして戦い、チームをここまで押し上げてきてくれたOBたちの思い。

敗戦に涙したあの思い。

なんとかJリーグにあげようと支えあったみんなの思い。

苦渋の思いでチームを去って行ったOB選手たちの思い。

・・・これらは栃木SCの財産だったはず。


監督が悪い、選手が悪い、環境が悪い、クラブが悪い、サポーターが悪い。

誰かのせいにし、あの頃の思いを捨てて、負けることに慣れ、必死さを忘れ、ただ目の前の試合を消化するだけの今。

いつからみんなそんなに偉くなったんだろう。


もう一度あの頃の気持ちに戻って戦ってほしい。

今年のスローガンは「挑戦」です。

偉そうに上から見下していられる存在ではなく、我々は下から這い上がる挑戦者です。

一日も早く、それを思い出してくれることを願ってやみません。